新印象派とポスト印象派とは?印象派との違いって?

印象派は有名で、あなたも名前くらいは聞いたこともあるかもしれません。
しかし新印象派やポスト印象派と聞くとどうでしょう?

「え?印象派と何か違うの?」
…と思うかもしれませんね。

 

新印象派とポスト印象派は、印象派を出発点としているものの表現したいものが違うのです。
実は新印象派とポスト印象派は、現代アートの基礎を築き上げた超重要な人たちです。
今回はそんな西洋美術史における影の革命家たちを紹介します。

さらにもしあなたがこのページを最後まで読めば「自分らしさ」の見つけ方まで理解できるようになります。(ココでしか聞けないアートの思考法なのでお楽しみに!)

新印象派とポスト印象派ってなに?

新印象派もポスト印象派も、印象派の延長線上にある新しい美術様式です。
しかし延長線上にありながら、印象派の限界を打破しようとした新しい美術なのです。

印象派について詳しくはこちらの記事をどうぞ。

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次からは新印象主義とポスト印象主義が、それぞれどのような特徴があるのかを解説していきます。

新印象派の特徴

新印象派はジョルジュ・スーラという画家によって始まりました。

ジョルジュ・スーラ

スーラは印象派に限界を感じ、それを打破しようとしたのです。
では印象派の限界とは一体なんなのでしょうか。

印象派は光の瞬間性を捉えることに重点を置いていました。
つまり光の変化を筆と絵の具でどう描くかという、うわべの表現にこだわることを意味します。

そんな中「うわべの表現だけじゃダメじゃね?」と印象派の殻を破ろうとしたのが新印象派の画家たちだったのです。

そんな新印象派には主に3つの特徴があります。

  1. 点描画
  2. 永遠性
  3. 化学的に意図された構図

です。

1つずつ解説します。

点描画

印象派の特徴に筆触分割というものがありました。

筆触分割とは、パレット上で色を混ぜずに、ほぼ純色のまま色を隣同士で置き、離れてみると隣同士の色が互いに影響しあうことで新たな色味に見せるという技法。

絵の具は混ぜるほど色のトーンは暗くなります。
印象派は光を主題とした芸術なので、色を混ぜない筆触分割によって明るい光を表現しました。

スーラはこの筆触分割をさらに進化させたのです。
そしてその先にあったのが「点描画」という表現です。

点描画とは、細かいドットを並列して絵を描く方法。

点描画により徹底した分割筆触をすることで、色を混ぜずに視覚的に様々な色を表現しました。

下の絵がスーラの点描画です。

ジョルジュ・スーラ《グランドジャット島の日曜日の午後》

 

印象派の筆触分割も原理としては同じですが、新印象派のように点描画として描くことで、さらに色がまざることがなく、徹底した筆触分割が可能になりました。

スーラが印象派の筆触分割をさらに徹底して、点描画という技法に進化させた。

永遠性

新印象派が印象派と異なるのは、なにも点描画だけではありません。
印象派と新印象派は、そもそもとして目指すべきものが違うのです。

印象派は移ろいゆく光の瞬間性にこそ真実があると信じていました。

それに対して新印象派は、自然から絶対的な永遠性のある真理を見出す事ができると考えました。
新印象派は、印象派が追い求めた移ろいゆく自然の瞬間性ではなく、その奥にある普遍的な法則を追い求めたのです。
この考えこそ、うわべの表現にこだわった印象派の殻を破った、新印象派の大きな特徴です。

印象派→自然を瞬間性として捉える
新印象派→自然の中の永遠性を求める

ということですね。

新印象派は自然から普遍的な法則を見出そうとし、そこに永遠性を求めた。

化学的で意図された構図

新印象派は自然の中の普遍的な法則を求めたので、絵画の色や構図も人に与える効果を予想しました。
つまり新印象派の絵画は意図的に計算された絵画なのです。

それは戸外制作で素早く「あるがままの自然」を描いた印象派とは全く違うアプローチです。
印象派と新印象派の精神性の違いがとてもよく現れています。

先ほどの《グランドジャット島の日曜日の午後》は点描という新しい技法を使っています。
しかし構図自体は右奥から左手前に向かって透視図法が広がる古典的な構図である事がわかりますね。

ジョルジュ・スーラ《グランドジャット島の日曜日の午後》

 

また、印象派が非常に感覚的に描いた光の表現を、新印象派は論理的で化学的に表現しようとしました。
新印象派のジョルジュ・スーラは色彩の科学理論に興味を持っており、絵画を科学の裏付けによって表現しようとしたのです。
そして色の補色の関係など、科学的に分析した色彩だけを使って点描画をシステマティックに描きました。

当時スーラは、シャルル・アンリ著『科学的美学入門』やスペルヴィル著『芸術における絶対記号について』などの本にも影響を受け、科学への熱はさらに高まっていったのです。

新印象派は印象派の感覚的な光の表現を、論理的で科学的に表現しようとしたため、構図や色彩も画家の意図的な計算によって作られた。

ポスト印象派の特徴

新印象派の次に生まれた美術様式はポスト印象派と呼ばれます。

そもそもポスト印象派の「ポスト」は「〜の後」という意味なので、ポスト印象派とは「印象派の後の芸術」という意味です。

ポスト印象派は後期印象派とも言われますが、実際には「印象派の後期」というよりも、印象派に反対する形の運動だったので脱印象派や、むしろ反印象派といったほうがしっくりくるかもしれませんね。
僕も「後期」って言葉に騙されるとこでした…。

 

ポスト印象派は印象派を批判し、新しい規範を求めた芸術でもあります。
印象派のうわべの技法による表現を批判し、形や色を工夫した絵画ならではの表現をするようになるのです。

そしてポスト印象派はその後のフォービズム、キュビスム、シュルレアリスムなどの前衛芸術に強い影響を与えた芸術とも言えます。

また、ポスト印象派の3大巨匠として知られているのが、

  • ポール・セザンヌ
  • ポール・ゴーギャン
  • フィンセント・ファン・ゴッホ

の3人です。

ゴッホについては下記のページで解説しているので参考にどうぞ。

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ポスト印象派は「印象派の後」という意味で、印象派の後期ではなく印象派を批判する形で生まれた。
ポスト印象派は、印象派と20世紀の現代美術を結ぶポジションである。

 

ポスト印象派の「真実は普遍である」と考える点は新印象派と共通します。
しかし画家の観念や内面性を表現する作風がポスト印象派の大きな特徴です。

画家の観念を表現することに重点が置かれるため、色や線、モチーフの形などをより自由に使って画家自身の観念を表現しました。
そのため画家によって表現したい観念が異なるために、様々な作風が生まれたのもポスト印象派の特徴と言えます。

モチーフを写実的に描くことよりも、画家の観念を優先して表現する考えは20世紀現代美術の哲学に通じるものです。

ポスト印象派は、画家の観念を表現するため、色・線・形を自由に使い様々な作風が生まれた。

ポスト印象派の画家たちとその作品

ポスト印象派の画家たちは、その作品の特徴と同様に主題も様々でした。
そのため「ポスト印象派とはこういう芸術だ」と説明するのが難しいのです。

ここではポスト印象派の3大巨匠である、

  • ポール・セザンヌ
  • ポール・ゴーギャン
  • フィンセント・ファン・ゴッホ

の3人を例にポスト印象派を解説していきます。

ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌ

セザンヌはポスト印象派を代表する画家で、「近代絵画の父」とも呼ばれています。

印象派はうわべの表現にこだわりましたが、セザンヌは構造に目を向けました。
従来の遠近法などは用いず、微妙な色彩の変化と、モチーフを歪めたりと、セザンヌ独特の絵画表現で奥行きや立体感を表現したのです。

セザンヌは絵画の中に様々な視点を同時に存在させたり、絵画を本物のコピーではなく創造物として本物の価値に匹敵すると考えました。

また、セザンヌは20世紀の芸術家に多大な影響を与えており、彼の芸術はピカソを代表するキュビズムや、抽象美術への道を切り開きました。

《オーヴェルの首吊りの家》1872-73年
《サント・ヴィクトワール山》1887年頃
《リンゴとオレンジのある静物》1895-1900年
《大水浴図》1898 – 1905年

ポール・ゴーギャン

ポール・ゴーギャン

ゴーギャンは印象派の収集家でもありましたが、目指すものは印象派とな異なっていました。
印象派がうわべの表現にこだわったのに対して、ゴーギャンの芸術は内面的なものを表現しようとしたのです。

ゴーギャンは総合主義でもありました。

総合主義とは、

・はっきりした輪郭線
・ヴィヴィットな色の平塗り
・単純化した形

などが特徴で、それらを総合的に使って画家の意図を伝えるというもの。

ゴーギャンが評価されるようになったのは彼が死後であり、その前衛的で反自然主義的な作風は20世紀の絵画に大きな影響を与えました。

《黄色いキリスト》1889年
《イア・オラナ・マリア(我マリアを拝する)》1891年
《タヒチの女(浜辺にて)》1891年
《われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか》1897-1898年

フィンセント・ファン・ゴッホ

フィンセント・ファン・ゴッホ

ゴッホもまたポスト印象主義の代表的な画家であり、現代美術に大きな影響を与えています。
ゴッホの画家生活は10年と短かいですが、1000点以上の絵を制作しました。

大胆な色彩と、独特の筆致で激しい感情を表現するのがゴッホの作風です。
そのゴッホ独特の作風は、パリに出た時に触れた印象派と日本の浮世絵に影響を受けています。

ゴッホの作品には全て感情が表されているのです。
絵画はゴッホ自身の感情表現の道具だったのかもしれません。

《タンギー爺さん》1887年
《ひまわり》1888年
《夜のカフェテラス》1888年
《アルルの寝室》1888年
《星月夜》1889年

ゴッホの短い人生は、極めて波乱万丈な人生でもありました。
ゴッホの夢と絶望の物語をもっと見てみたいと思ったら、こちらの記事も参考にしてみてください。

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まとめ

カイト
ここで新印象派とポスト印象派についてまとめておきます。

新印象派とポスト印象派は印象派の延長線上にありつつ、印象派の限界を打破したものです。
そしてその後のフォービズム、キュビスム、シュルレアリスムなどの20世紀の前衛芸術への道を切り開いた芸術とも言えます。

新印象派

ジョルジュ・スーラをはじめとする印象派の次の芸術運動。
印象派の感覚的な光の表現を論理的で化学的なアプローチから表現しようとした。
瞬間性を求めた印象派とは違い、自然の中に永遠性を求めた。
点描画が特徴的。

ポスト印象派

印象派のうわべの表現を批判し、形や色などを工夫した絵画ならではの表現をするようになる。
セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホが3大巨匠と呼ばれ、特にセザンヌは後のキュビズムなどに強い影響を与えたことから「近代絵画の父」と呼ばれている。
印象派と20世紀の近代美術を結ぶ立場となっている。

新印象派とポスト印象派に学ぶアートの思考法

新印象派とポスト印象派は、現代に生きる僕らに何を語りかけるのか?
それは「自分らしさ」を探すプロセスです。

新印象派・ポスト印象派は共に、印象派の延長線上に位置するも、印象派を乗り越え、時には批判して成長しました。
このように、すでにあるものに対しての自分の反応(リアクション)を分析することによって「自分らしさ」を発見できたりします。

新印象派・ポスト印象派の芸術家たちは、印象派に触れていたからこそ、それに対しての自分たちの芸術性(自分らしさ)を見つけることができました。
つまり新印象派・ポスト印象派の芸術家たちは、印象派の先人たちから学び、そこに対して自分たちのエッセンスを加えていくことで、新しい芸術感を創り上げていったのです。

 

格闘マンガやグルメ漫画は、全部同じようなテーマなのに、作者の個性をミックスさせると唯一のオリジナルなものになります。
ストーリーの骨組み(型)は同じでも、肉付けで個性を出せたらそれはもうオリジナルになるのです。

日本にも「守破離(しゅはり)」という成功法則があるのを、あなたは知っていますか?

守破離とは、

◆型を守り
◆型を破り
◆型から離れる

…という3ステップで成長していくという日本古来の成功法則。

新印象派・ポスト印象派の芸術家は、印象派という型に触れ、その印象派に独自のエッセンスを加えて型を破っていき、最終的に印象派とは異なる精神性(型)を確立させました。
これはまさに「主破離」のプロセスですよね。

実はこの「守破離」のプロセスは現代の僕らにも通じるものなのです。

僕らが何かを学びたい、何かを創造したいと思った時は、まず先人たちから学びます。
料理人になりたいなら、できる限り多くの料理を食べて研究するでしょう。
漫画家になりたいなら、大量に漫画を読んで学ぶはずです。
起業したいと思ったら、必ず「起業 やり方」とGoogleで検索して勉強しますよね。

しかし「型」を守っているだけだと、いつまでも先人たちの真似事の二番煎じになってしまいます。
そこであなたの独自エッセンスを先人の「型」にミックスするのです。
そうやって、あなただけのオリジナルの「型」を創り上げていくことができます。

その独自エッセンスこそ、あなたの「自分らしさ」です。

いろんなことを勉強し、研究していく中で、

  • 僕はこれは好きだけど、これは嫌いだな
  • もしかしたら、私はこういうものが向いているのかも

…と、新たに自分を発見することができます。

それは先人たちの情報に触れることで見えてくるのです。
印象派から自分たちの新たな芸術性を見出した、新印象派・ポスト印象派の芸術家たちのように…。

 

今日から何かを学ぶときや遊んでいる時、

  • 僕ってこの勉強の何が好きなんだろう?
  • 私が今やっていることに興味がある理由ってなんだろう?

…と自問自答しながら、生活してみてください。

その先には、新印象派・ポスト印象派が印象派に触れて自分たちの芸術を見出したように、あなただけの独自性が見えてくるはずです。

ではでは。

 

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