ミュシャ展の前に!ミュシャが作品に仕掛けたトリックとは?

今回のテーマは、日本でも展覧会が大人気のポスター画家アルフォンス・ミュシャです。
100年前のパリで活躍した画家ですが、今もなおミュシャの作品は僕らを魅了し続けています。

しかし、ミュシャのポスター作品には世の中のほとんどの人が知らない「あるトリック」があることを、あなたは知っていますか?

今回はミュシャが作品にかけた魔法のトリックをネタバレしていきます。

  • ミュシャが作品に仕掛けたトリック?
  • そもそもミュシャがどんな芸術家なのか知らないし…

全然大丈夫です。
初心者にもわかりやすく解説していくので安心してくださいね。

さらに後半ではミュシャに学ぶ「ビジネスに使えるイメージ戦略」というアートの思考法について解説します。(この内容はここでしか聞けないのでお見逃しなく!)

さあ、あなたも一緒にミュシャの「トリックの謎」を紐解いていきましょう。

アルフォンス・ミュシャとは?

名前:アルフォンス・ミュシャ
出身:チェコ
出没年:1860年〜1939年
様式:アール・ヌーヴォー
活躍:絵画・ポスター
特徴:魅惑と神秘の女性を描いたポスター画家
代表作:《モナコ・モンテカルロ》《スラヴ叙事詩》

ミュシャはベルエポックのパリで活躍した画家でした。

ベルエポックとはフランス語で「良き時代」を意味する言葉で、主に19世紀末〜第一次世界大戦までのパリが繁栄した華やかな時代やその文化のこと。

普仏戦争と第一次世界大戦という2つの戦争に挟まれた、儚くも華やかな夢の時代です。

ある歴史家は、このバラ色の時代のパリに、

「暮らせること自体が、うっとりするほど素晴らしいことだった。金がなくとも、生活は厳しいにしても、パリにいるだけで生きる喜びを感じられたのである」

という言葉を残しています。

そんな魅惑的な良き時代でを彩った画家こそ、ミュシャなのです。

ミュシャとアール・ヌーヴォー

ミュシャはアール・ヌーヴォーを代表するポスター画家です。
アール・ヌーヴォーが「ミュシャ様式」とも呼ばれるほどでした。

アール・ヌーヴォーとはフランス語で「新しい芸術」という意味。今ではこの時代に主にヨーロッパで流行した芸術工芸運動を指す固有名詞として使われている。

アール・ヌーヴォーの特徴は、

  • 華や植物などの自然がモチーフ
  • 有機的で流れるような曲線
  • 日本美術の影響
  • 生活に溶け込む美

などが挙げられます。

それまで芸術は、宮殿や教会を飾るためのものでした。
しかしアール・ヌーヴォーという美術工芸運動は、美術とはもっと民衆の生活に溶け込むべきだという思想から生まれた運動です。

美術工芸運動なので、日常的に使われる食器などの工芸作品にもアール・ヌーヴォーのデザインは使われました。
つまり芸術面だけを強調した「使いずらいもの」ではなく、芸術面と使いやすさを両立した工芸品が求められたのです。

アール・ヌーヴォーのデザインはこんな感じです。

ウィリアム・モリスのカーペット
ヴィクトール・オルタ「タッセル邸」
エミール・ガレ作「花瓶」

ミュシャも純粋な絵画というよりも、実用的なポスターを作っていたのがアール・ヌーヴォー的ですよね。
そしてミュシャのポスターはアール・ヌーヴォーの特徴がふんだんに使われています。

ミュシャの装飾パネル連作《四季》を例にアール・ヌーヴォーの特徴を見てみましょう。

装飾パネル連作『四季:春』
装飾パネル連作『四季:夏』
装飾パネル連作『四季:秋』
装飾パネル連作『四季:冬』

アールヌーボーの特徴である、花や植物といった自然をモチーフにしているのがよくわかります。
また、ミュシャの作品では女性の長い髪の毛が文様のように装飾的に描かれます。
これもアール・ヌーヴォーの有機的で滑らかな曲線という特徴がよくわかりますね。

ミュシャはアール・ヌーヴォーを代表する画家。

ミュシャと日本美術

ところで日本美術がミュシャに影響を与えていたことを、あなたは知っていますか?

アール・ヌーヴォーに影響を与えたのが、ジャポニスムの流行です。

ジャポニスムとは、西洋美術に日本美術の特徴を取り入れること。主にヨーロッパで大流行した。

アール・ヌーヴォーもそんなジャポニスムの影響を強く受けています。
「生活に溶け込む美」というのも、日本の工芸品からの着想です。

また、日本人が自然に対して感じる「美」の感覚は浮世絵などを通してヨーロッパに影響を与え、アール・ヌーヴォーの有機的な曲線デザインが生まれました。

そして日本美術はミュシャにも影響を与えています。

ミュシャのポスターを見てみましょう。

ミュシャ《モエ・エ・シャンドン社のシャンパン》

ミュシャのポスターは縦に細長い構図がとても多いのです。

これは日本の掛け軸にそっくりだと思いませんか?

ミュシャも日本美術に強い影響を受け、自分の作品に日本美術の要素を背極的に取り入れました。
日本人がミュシャを好きな理由はここにあります。
ミュシャが日本美術を取り入れているから、日本人である僕らはミュシャの作品を感覚的に好きなんですね。

ミュシャは日本美術に影響を受けているため、日本人も感覚的にミュシャの作品を好きになる。

ちなみにジャポニスムは印象派にも強い影響を与えています。
印象派も日本で大人気ですが、その理由はミュシャが日本で人気な理由と同じです。
印象派も日本美術の要素を取り入れたからこそ、日本人が感覚的に好きな作風になったのです。

印象派についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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ミュシャが多用したQ型方式の構図

ミュシャが作品で多用した構図があります。
それが女性を包む円環です。

ミュシャ《黄道十二宮》
ミュシャ《ビザンティン風の頭部:ブルネット》
ミュシャ《四芸術ー絵画》

これはキリストの光輪的な役割を持っていて、人物の背景に円環を配することで、その存在を神々しさで包んでいるのです。

また、このような構図は、アルファベットの「Q」にも見えることから「Q型方式」とも呼ばれ、ミュシャが多用し、現代の様々なクリエイターたちに影響を与えています。

意外と身近なものでも「Q型方式」のデザインは使われているので、探してみると面白いかもしれません。

ミュシャはポスターの主役を神々しさに包むためQ型方式を多用した。

ミュシャ展にいく前に知っておきたい、ミュシャの作品と生涯

ここからはミュシャの作品を追いながら、ミュシャの生涯を紐解いていきましょう。

無名だった画家が、ある1枚のポスターによって一躍脚光をあびることになり、パリの大スターになるシンデレラストーリーがあります。
そのシンデレラストーリーを実現したのがミュシャでした。

ドキュメンタリー番組で語られたら、うまくできすぎて創作なんじゃないかと疑うレベルです(ひねくれてんなぁ…)

もともとミュシャは雑誌の挿絵を描く仕事をしながら、貧しい日々を送っていました。
その「運命の日」までは…

《ジスモンダ》〜運命の依頼〜

そして1894年のクリスマスの日、ミュシャの元にある依頼が舞い込んできました。

それが、当時の大女優サラ・ベルナールが演じる劇『ジスモンダ』のポスターを作ってほしいというもの。
その日はクリスマスで残っていたデザイナーはミュシャだけでした。

このサラ・ベルナールこそ、ミュシャを大スターに押し上げた人物です。

ミュシャは早速制作に取り掛かりました。
そして出来上がったポスターが《ジスモンダ》です。
その出来栄えは見事なもので、パリ中に貼られたポスターがポスター狩りにあるほどでした。
めっちゃ人気ですやん。

ミュシャ《ジスモンダ》

このポスターを大女優のサラ・ベルナールはとても気に入り、ミュシャと6年間の契約を結びました。
ミュシャはサラという大女優のポスターを次々と制作し、パリのポスター界の大スターになったのです。

ミュシャがポスターに仕掛けた「トリック」

実はミュシャのポスターには「あるトリック」が仕組まれています。
それは巧みな視線誘導です。

《ジスモンダ》を例に見ていきましょう。

まず僕らは最初にサラの顔に注目します。
その次にサラの目線の先にある、手に持った草に視線が移り、そこからアーチ状にサラ・ベルナールという文字を辿ります。
そして斜めに走るサラの衣装に惹きつけられ、最後に劇場の名前である「ルネサンス座」へと視線が誘導されるのです。

ミュシャが仕掛けた《ジスモンダ》の視線誘導をまとめると、

  1. サラの顔
  2. 手に持った木の枝
  3. アーチ状のサラベルナールの文字
  4. 斜めに走るサラの衣装
  5. 「ルネサンス座」の文字

となります。

僕らはこのポスターを見たときに、自然とこのような順番でポスターの全体を眺め、そして最後に劇場の名前へとたどり着き、実際にその劇場へと足を運びたくなるのです。

芸術と広告としての実用が見事に両立されています。
この視線誘導ですが、実は昔から西洋絵画では使われる技法です。
ミュシャは伝統的なミュンヘンの美術学校で、アカデミックな絵画技術を学んでいたため、西洋絵画の視線誘導をポスターに応用できたのですね。

ミュシャは巧みな視線誘導をポスターに使用し、ポスターに芸術性と実用性を融合させた。

《ルフェーブル・ユティル・ビスケット》

ミュシャ《ルフェーブル・ユティル・ビスケット》

こちらのポスターはビスケットを宣伝するものですが、ここにもミュシャの「ある戦略」が隠されています。

普通なら宣伝したい商品(今回の場合はビスケット)を大きく描いてしまいがちですが、ミュシャはこちらを見つめる女性を主役にしています。

これはミュシャによる「イメージ戦略」で、ビスケットが子供だけでなく、大人にもふさわしい製品であることをアピールしているのです。
ミュシャのポスターは商品のイメージを再定義してしまうほどの魅力を持っていました。

さらにポスターに描かれた女性は、ケシの花や小麦の穂による華やかな髪飾りをしていますね。
これは自然の恵みを保表現すると共に、製品の原材料をヴィジュアル化したものでもあります。
めちゃくちゃオシャレやん。

ミュシャはポスターの主役を魅力的に描き、商品に対するイメージを操作するイメージ戦略をとった。

《横道12宮》

ミュシャ《黄道十二宮》

こちらの作品もミュシャの代表作の1つです。
横道とは、天球上の太陽の満ち欠けの軌跡のことです。
この横道を12分割し、それぞれに星座を当てはめたものを「横道12宮」と言います。

実はこの作品はカレンダーとして使われたものです。
横道を12分割した星座が各月に対応するため、カレンダーのモチーフとしてふさわしいものでした。
ちなみにカレンダーとして使うときは、下段の枠内に暦を印刷して使用されていました。

《ジョブ》

ミュシャ《ジョブ》

こちらはタバコの巻き紙を作っているジョブ社を宣伝するポスターです。
今では巻き紙は少なくなりましたが、当時は喫煙者にとっては必需品でした。

ミュシャが様々な作品で多用した、文様化した女性のロングヘアが特徴的です。
この植物の蔓(つる)のような、有機的な曲線はアール・ヌーヴォー的な装飾デザインです。

《モナコ・モンテカルロ》

さあ、ここでクイズです。
あなたはこのポスターが何の広告かわかりますか?

ミュシャ《モナコ・モンテカルロ》

…。

……。

答えは出ましたか?

正解は、

「鉄道会社」の広告です。

「え?どこが鉄道なの??」
…とあなたは思ったかもしれません。

そう、このポスターは鉄道会社の広告なのに鉄道が描かれていません。
何故なのでしょう?

それはミュシャお得意のイメージ戦略として描いたからです。

ミュシャ《モナコモンテカルロ》

花輪が鉄道の車輪を表し、伸びる植物の茎はパリからモナコまで伸びる鉄道の線路を表現しています。
背景をよく見てみると、モナコの有名な『カジノ・モンテカルロ』が小さく描かれていますね。

鉄道を直接的に描くより、一瞬「何の広告だ?」と気を引き、一度見たらその美しさからずっと見ていられるような広告になっています。

そして

  • モナコってどんな場所だろう…
  • モナコまでの鉄道の旅はどんなに美しいだろうか…

…と想像し、イメージが膨らんでいくのです。

まさにこのポスターの描かれている女性のように、鑑賞者は鉄道の旅をうっとりと思い浮かべるでしょう。

また、この広告にもミュシャの計算された視線誘導は使われています。

ミュシャ《モナコ・モンテカルロ》

まず手前の大きな花輪から、左上に伸びる植物の茎を辿り、女性を囲みながら女性の視線の先にあるモナコ・モンテカルロの文字へと自然と誘導されるのです。

一見分かりずらい広告ですが、思わず見てしまう魅力と、いつまでも眺めていたくなるようなミュシャの魔法がかけられているのです。

ミュシャはこんな言葉を残しています。

「人々の感覚を目覚めさせ、
芸術家のメッセージに耳を傾けさせるには、
まず彼らを誘惑する方法を知らなければならない」

ーアルフォンス・ミュシャ

一瞬にして鑑賞者の心を掴むミュシャの魔法は、伝えたいメッセージを届けるための、鑑賞者の目を引く「誘惑の研究」によって生まれたものでした。

《4つの花》

ミュシャはポスターの他にも装飾パネルを2点や4点の連作として描くこともありました。
《4つの花》はその1つです。

《4つの花ーバラ》
《4つの花ーアイリス》
《4つの花ーカーネーション》
《4つの花ーユリ》

そもそもアール・ヌーヴォーは「花の様式」とも呼ばれるほど、植物や花の有機的な曲線をデザインに落とし込むものです。

アール・ヌーヴォーの花の表現においてピカイチだったミュシャが、「花」をモチーフにした作品で失敗するはずがありません。

「花と少女」の組み合わせは、数々の画家たちが描いてきましたが、ミュシャは少し違った表現で描いています。
他の画家たちは花と少女を別の存在として組み合わせています。
それに対しミュシャは、少女が花をまとい一体化させることで、まるで少女が花の化身であるかように描いたのです。

《4つの花ーユリ》

それによって、より神秘的な雰囲気をまとい、ミュシャ独特の世界観へと鑑賞者を誘っています。

このような連作は最初に紹介した《四季》シリーズの他に《4つの宝石》シリーズなどがあります。

《スラブ叙事詩》

パリで大成功を収めたミュシャは、50歳にして故郷へ帰り、スラヴ民族を讃える画家になりました。

パリに住みながらも忘れることのなかった祖国愛と、スラヴ民族主義に加えて、パリの大スターとして祖国に恩返しをしたいというミュシャの思いが伺えますね。
素敵やん…。

そしてミュシャは後半生の全てを注ぎ、壁画的スケールの傑作《スラブ叙事詩》を製作しました。

《スラヴ叙事詩》は20枚の大画面からなる連作で、大きなものは6×8メートルもある超大作です。
ミュシャが製作に着手してから、プラハ市へと引き渡されるまで18年の年月をかけて描かれました。

《スラヴ叙事詩》制作中のアルフォンス・ミュシャー1920年

《スラヴ叙事詩》の内容は古代から現代までのスラヴ民族の苦難と栄光の歴史を描いたものです。

ミュシャは製作にあたり、様々な文献を研究しながら主題についての知識と理解を深めていきました。

ミュシャの、

「私は自分の国と、全てのスラヴ民族の喜びと悲しみに思いをはせた」

…という言葉から、スラブ民族の団結や統一、そして自立を願うミュシャ自身の思いを強く感じますね。

 

《故郷のスラヴ人 — トゥラン人の鞭とゴート族の剣の間で》
《ルヤナ島のスヴァントヴィト祭 — 神々が戦う時、救いは芸術にある》
《大ボヘミアにおけるスラヴ的典礼の導入 — 母国語で神をたたえよ》
《ブルガリア皇帝シメオン — スラヴ文学の明けの明星》
《ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世 — スラヴ王朝の統一》
《セルビア皇帝ドゥシャンの東ローマ帝国皇帝即位 — スラヴの法典》
《クロムェジーシュのヤン・ミリーチ — 尼僧院に生まれ変わった娼家》
《ベトレーム礼拝堂で説教するヤン・フス — 真実は勝利する》
《クジーシュキでの集会 — プロテスタントの信仰》
《グリュンワルトの戦闘の後 — 北スラヴ人の団結》
《ヴィトーコフの戦闘の後 — 神は権力でなく真理を伝える》
《ヴォドナャニのペトル・ヘルチッキー — 悪に悪をもって応えるな》
《フス教徒の国王ボジェブラディのイジー — 条約は尊重すべし》
《クロアチアの司令官ズリンスキーによるシゲットの防衛 — キリスト教世界の盾》
《イヴァンチッチェでの聖書の印刷 — 神は我らに言葉を与え給うた》
《ヤン・アモス・コメンスキー — 希望の灯》
《聖山アトス — オーソドクス教会のヴァチカン》
《スラヴの菩提樹の下で誓いを立てる若者たち — スラヴ民族の目覚め》
《ロシアの農奴解放の日 — 自由な労働は国家の基盤である》
《スラヴの歴史の神格化 — 人類のためのスラヴ民族》

まさに半生をかけた超大作と言えます。

ミュシャは晩年、故郷に帰り、《スラヴ叙事詩》という超大作の連作を創る。

まとめ

遠藤ユウ
ここでミュシャについてまとめておきます。
ミュシャはベルエポックの時代に活躍したチェコ生まれのポスター画家。
ミュシャはアール・ヌーヴォーを代表する芸術家。
日本美術(ジャポニスム)がミュシャに影響を与えた。
サラ・ベルナールに気に入られ当時のパリで一気に成功した。
Q型方式の構図を多用した。
ポスターに視線誘導のトリックを使った。
イメージ戦略を巧みに使用した。
晩年は故郷に帰り、スラヴ民族を讃える画家になった。

ミュシャに学ぶアートの思考法

現代に生きる僕らがミュシャから学べることは何だろうか?
それはもちろん「イメージ戦略」です。

「なぜ香水のCMは美男美女しか映さないのだろう?」

そんな素朴だけど重要な疑問をミュシャは僕らに問いかけています。

あなたは香水のテレビCMで、

  • 香水の香りの説明
  • 香水の成分の説明
  • 正しい香水のつけ方

…などを見聞きした覚えはありますか?

おそらく無いはずです。

上記のものは、もしあなたが香水を誰かに売ろうとしているなら真っ先に説明したくなるものですよね。
しかし実際のCMではただ美男美女が話したり踊ったりしているだけです。
おそらく撮影時にその美男美女は商品となる香水をつけてすらいないでしょう。

それなのに、なぜ僕らはその香水が欲しくなってしまうのでしょうか?

それは僕らが本能的に、自我の価値を高めたいと思っているからなのです。

自我とはつまりセルフイメージのことで、自分がどのような人間だと認識しているかということです。

簡単に言うと、僕らは常に自己重要感を感じていたいということです。
そして足りないものを埋め合わせるためにモノを買っているのです。

例えば、

  • もっと強くなりたい
  • もっと美しくなりたい
  • もっと異性にモテたい
  • もっと自信を持ちたい

…といった欲求は人間が元来持っている基本的な欲求です。

僕らはこれらの欲求を埋めるためにモノを買います。

もうお分かりだと思いますが、香水のCMは顧客の自我へアプローチしているのです。
それが「香水の香りの説明」より、はるかに強力なことを企業は知っているからです。

海外モデルやセレブ女優を起用した香水のCMを見たとき、女性はこう感じます。

「美しいモデルが素敵な笑顔を浮かべてるわ。私もこの香水が欲しいな」

シンプルすぎて笑ってしまいそうになりますが、これは事実です。

その時、彼女の脳はこう考えているのです。

「私もこの香水を使ったら、あのモデルみたいにもっと美しくなれるかしら…」

…と。

これは男性も同じです。

「香水のCMでイケメン俳優が美女に囲まれてるぞ。(財布からクレジットカードを取り出す)」

……。(男って単純だなぁ)

 

スポーツブランドがアスリート達を格好良くプロモーションに使ったりするのも同じ原理です。

「数々の実績を持つ恰好良いアスリートのシューズには、あのブランドのロゴが…」

シューズの機能性や履き心地の説明はせずとも、顧客の自我に響けば多くの人がそのシューズを求めるのです。

このように「憧れの集団に属したい」という人間の心理は、心理学では「バンドワゴン効果」と呼びます。

また、人は医者などの社会的地位の高い人や有名人の言うことを無条件に信じるという習性を持っており、これを心理学では「権威性」と呼びます。

こういった心理学に基づいた消費者へのアプローチは、現代のビジネスや広告業界で数多く使われています。
そしてそのような方法を約100年前に実践していたのが、アルフォンス・ミュシャなのです。

子供のお菓子だと思われていたビスケットを美しい大人の女性でポスターを描き、
タバコの巻紙ではなく、そのタバコを吸う美しい女性を主人公にし、
鉄道そのものではなく、鉄道で行く鉄道旅を思い浮かべる美しい女性を描き出しました。

もしあなたがミュシャのポスターを見て、

  • 綺麗だな
  • 美しいな

と思ったなら、それはミュシャの狙い通りなのです。

100年前も同じように、

  • オシャレにビスケットを食べてみたいわ
  • この女性みたいに美しくタバコを吸ってみたいな
  • 私も鉄道旅行をするモダンな存在になれるかしら

…なんて思っていたことでしょう。

ミュシャはアートとビジネスの両方の視点を持った優れたクリエイターだったのです。

このように、100年前のポスターでも現代のビジネスシーンや情報発信の参考にすることがでます。
なぜなら、100年前から時代は変わっても人間というものは変わらないのですから。

 

ではでは。

 

 

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